10年間の軌跡 2

最初の1年間は長野市信更町高野のYさん宅で農業の基本を覚えました。
田植え・トラクターの運転・インゲンの収穫と出荷・堆肥撒き・草取り・野沢菜の種まき・などなど、どれもが始めての体験でした。朝から午前中にかけてインゲンを収穫し、午後からそれをサイズ別に、S・M・Lの規格に分け、それを2kg箱に丁寧にならべるのですが、それが実に面倒な作業で、形が曲がっているものは、はねてまっすぐに実が伸びているものを選んで箱にモザイク細工のようにきれいに並べていくのです。私は農業1年生という事もあり、最初は全部Yさん(とやんと呼んでいました。)
の言うとおりにやろうと決めていたので、毎日2Kg箱を5~6ケース、多いときは10ケース出す事もありましたが,全部農協出荷をしました。翌日には伝票が回ってきて、昨日の出荷額が分かるのですが、それを見て愕然としました。その価格は1ケース2Kgで良いときで1000円ひどいときは200円という事がありました。朝早くから収穫して、箱詰めをし、夜までかかって作業をしても1日たったの1000円!!日本の農業が山村から消えていくのはあたりまえだと本当に実感しました。 年金を貰いながら、かろうじて先祖伝来の田・畑を守っている。それが大部分の日本の山村の農業の実態です。後継者が出ようはずもありません。会社勤めをしながら、休みの日に、米を作るのが精一杯のところなのです。高齢化はますます進み、長野の山村では高齢化率が40%を超えるところも出てきました。
あと10年も経たないうちに、山村は自治が成り立たなくなり、田畑は荒れ放題になるでしょう。
農産物の値段の安さという事では、こんな事もありました。とやんと1反部(333坪)ほどの畑にお盆過ぎに大根(丈の短い漬物用の大根です。)を3000本ほど種まきをしました。11月ぐらいに収穫したのですが、とやんは漬物屋さんが大根を買ってくれるから、連絡を取ってくれと、電話番号を教えてくれたのです。私が連絡をすると、ビニール袋に大根を詰めておいてくれというので、肥料袋に20袋ほど大根をぎっしりつめておくと、さっそくトラックで漬物屋さんが大根を取りに来ました。一袋500円というのが漬物やさんの提示した額でした。3ヶ月間ぐらい、草取りをしたり、手間をかけた大根が全部で1万円ほどにしかならないのです。農協に頼り、一般市場に頼るだけでは、自立した農業は成立しえない。このことを痛いほど実感しました。

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